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2024年 国際協力青年ボランティア&視察研修 ≪ヨルダン隊≫

ルサイファセンターで青少年の教育支援 子供たちの弾ける笑顔に「地球は一つの家族」を実感 ボランティア隊だからこそ体験できた

中東ヨルダンは天然資源が少なく、水資源も非常に乏しい砂漠地域です。国民の半数以上は、中東戦争を逃れて移住したパレスチナ難民やその子孫たちと言われており、若者の失業や貧困、所得格差が問題となっています。そこでWFWPは女性の自立支援と青少年の学習支援のため、ヨルダンのザルカ県においてルサイファセンターを運営しています。今回は、ユース10名と会員2名が現地で活動してきました。

≪実施期間≫2024年9月1日~10日
≪活動内容≫社会開発省大臣訪問、日本ヨルダン文化交流、姉妹結縁、家庭訪問、ルサイファセンターの生徒と交流、観光

社会開発省大臣を表敬訪問

海外派遣員が入国して3年後の1997年、WFWPはヨルダン政府に活動実績が認められて国の認可を受け、社会開発省に団体登録しています。

今回お会いしたHE Dr. WAFAA BANI MUSTAFA大臣は、選挙期間中の多忙な時期にも関わらず、温かく出迎えてくださいました。大臣はヨルダンの女性活躍のため尽力しており、WFWPの理念や女性の自立支援に共感してくださいました。

ムスタファ大臣(写真中央)と

WFWPヨルダンと交流―「ボランティアに幸せ感じる」

WFWPのセンターをザルカ県に移す前は、首都アンマンの貧困地域ワディシールを拠点に活動していました。女性の自立支援のために20年間一緒に活動していたメンバーを訪問すると、「WFWPの日本人派遣員とボランティア活動をすることで、人に奉仕する幸せ、人を助ける幸せを知ることができて嬉しい。現在、ワディシールにセンターはないが、地域の女性たちのために活動を継続している」と話してくれました。物資支援だけではなく、現地の人々にボランティア精神を伝えることの大切さを感じたひと時でした。

ワディシールのメンバーと
ヨルダン家庭料理を振舞ってくれた

日本・ヨルダンの文化交流で友情はぐくむ

女性の自立支援活動をしている現地NGO「Jordanian Women’s Village Association」と文化交流を行い、アンマン県フフェイス市知事も来賓として駆けつけてくださいました。日本からは歌と盆踊り、茶道を披露し、ヨルダンからは民族衣装とダンスを紹介。浴衣の着付け体験をしたり、ダンスを一緒に踊ったりと、お互いの文化を通じて相互理解を深め、友情を育む有意義な時間となりました。

会場の様子
ヨルダンの民族衣装は,長さ3mと世界最大級
日本の歌を披露

姉妹結縁式

WFWPは国籍や民族、宗教の違いを超えて、平和のために女性が姉妹の関係を結ぶ「姉妹結縁運動」を行っています。そのセレモニーが姉妹結縁式で、WFWPが運営するルサイファセンターの女性や先生と姉妹の絆を結びました。最初は緊張した面持ちのユースたちも、姉妹となった女性と手を取り合い挨拶をすると、すぐに打ち解けて笑い合い、会場は温かい雰囲気に包まれました。

家庭訪問で現状を深く知る

ヨルダン人の生活や難民についての理解を深めるため、センターの先生と生徒のお宅を訪問しました。

ビラール先生の家庭は、イスラム教の聖典コーランに沿った生活をすることで喧嘩や争いのない円満な家庭を築いているそうです。日本人にとってあまり馴染みのないイスラム文化を学ぶ良い機会となりました。

ムハンマッド君の家庭では、父親(ガザ地区出身)と母親(シリア出身)が難民となるまでの壮絶な道のりを話してくれました。ヨルダンに定住してからも、難民に与えられるID(身分証明書)による制限で苦労しているそうです。ご両親は、経済的に厳しい状況下でも子供たちに教育を受けさせたいと息子2人をWFWPのセンターに通わせています。ムハンマッド君兄弟は、将来エンジニアやサイバーセキュリティ関係の仕事に就きたいと夢を語ってくれました。

アタ先生の叔父にあたるアリさんは、ガザ地区出身で難民キャンプに住んでいます。数週間前、イスラエルの空爆でガザ地区に住む弟を亡くしたばかりです。すべてを捨ててヨルダンに逃れた当時は、言葉に言い尽くせない悲しみや苦しみ、絶望を感じながらも、アラビア文字のカリグラファーという自分の才能を磨き上げ生計を立てています。

参加者は家庭訪問を通して人々の生活を体験し、WFWPが行うボランティア活動の背景や難民の現状を知ることができました。

WFWPのルサイファセンターを視察

イラク戦争・シリア紛争などで何百万人もの難民がヨルダンに流れ込みました。貧困から治安が悪化、学校が巨大化し、一度落ちこぼれると授業についていけなくなる貧困層の子供たちが増加しました。WFWPのセンターがあるルサイファ市も麻薬や暴力にあふれ、楽しみを求めて盗みを覚える子供たちが多くいます。

 

WFWPが学習支援を始めて9年。当初は生徒が警察沙汰になるなど問題行動が多く、試行錯誤を経て現在は、10~18歳の約120名の男子生徒がセンターに通っています。学習意欲があり、大学受験を目指す子供たちを支援することが国のためになるとの考えから、成績優秀者のフォローアップを強化しています。教育によって貧困による負の連鎖を断ち切り、地域に役立つ人材を輩出していくことが何より希望です。しかし、円安と支援金不足によるセンターの運営維持は容易ではなく、切実な課題となっています。

生徒たちと遠足でアクティビティ

ヨルダンは日本の学校とは異なり、運動会や文化祭などのイベントがほとんどありません。遠足は年1回ありますが、貧困家庭では参加費を払うことができません。イベントは喜びや活力を引き出してくれるため、ある面、成長期においては勉強より大切な機会と言えます。

そこで今回は、生徒たちに思いきり楽しんでもらおうと遠足を実施しました。着いた先でのパン食い競争やしっぽ取りなど、ユースが企画したゲームは大盛り上がり。生徒たちの弾けるような笑顔やユースを見習ってゴミ拾いする姿に、彼らはヨルダンの未来の希望なのだと実感しました。

ヨルダンの支援連合会から寄付していただいたサッカーボールや文房具をプレゼント

観光

最後の2日間は観光を通して、ヨルダンの歴史と大自然に触れました。モーセがカナンの地を臨んだとされるネボ山、地球上で最も標高が低い死海での浮遊体験、映画『インディージョーンズ』の舞台となったペトラ遺跡、赤茶色の砂と巨岩が火星のようなワディラム砂漠。ヨルダンの壮大な遺跡や景観を満喫しました。

ネボ山
死海や対岸のイスラエルを望む
死海で浮遊体験
ペトラ遺跡
ワディラム砂漠
テント泊で見えた夜空

参加者の感想

難民の方々の苦難など、ヨルダンに行かなかったら一生、知ることがなかったかもしれない世界の現状を知ることができました。観光で行けるようなところだけでなく、ボランティアとして行くことで、その国の内情を知ることができました。今後は、大学の友達や身近な人からヨルダンで感じたことや経験したこと、海外ボランティアに行くことのメリットなどを伝えていきたいと思います。(10代・大学生)

センターの子供たちとのアクティビティにみんなが笑顔で参加する姿を見て、国境は本当に関係なく、「地球は一つの家族」は夢ではないと肌で感じることができ嬉しかったです。

また、教育は読み書きを教えたりすることだけではなく、楽しかった! 嬉しかった! という子供らしい体験により、心が豊かになるという派遣員の話が心に残りました。「子供たちにそのような体験をたくさんさせてあげたい、未来につながるチャンスを与えたい、その土台作りのために頑張っている」という派遣員のモチベーションを聞いた時に、それを30年以上続けて見返りを求めない心に、本当に愛にあふれ、信念のある強い方だなと感銘を受けました。私も世界の平和に貢献できる人になりたいです。(20代・社会人)

WFWPが女性や母親の視点でその国に必要な支援を見つけ、愛を動機として根気強く投入し続けている現場を実際に見て、そこに関わる現地の人たちも他の為に与える喜びを感じ、ボランティアの輪が広がっていることを知ることができました。派遣員の皆さんが30年間も尽くしてきた愛が、具体的な形になって人々の心や生活を変えていることを実感しました。

また、イスラム社会に対して何となく「厳格で難しい」というイメージがありましたが、実際に現地の方々と触れ合ってみると、家族を大切にして他者への思いやりにあふれ、ボランティア精神を自然に持っている人々だと感じ、イメージが大きく変わりました。

争いが続き、心を痛めているヨルダンや中東の人々のために、私にできることは何だろうかと悩んでしまいますが、まずは関心を持ち続け、自分にできることを考えていきたいです。(30代・社会人)

WFWPは、生徒たちが真っ直ぐな心で成長していけるよう支援を継続してまいります。
引き続きご支援賜りますようお願い申し上げます。

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