WFWPは人材育成を通じてモザンビークの貧困問題の解決に寄与することを目指し、1995年、モザンビーク共和国ベイラ市に「モザンビークの太陽中学・高校」を開校しました。この学校では、貧困家庭の子供たちに安い学費で教育機会を提供しています。
高校は就職に有利な理系のみに
2025年2月16日より新学期がスタート。高校クラスでは理系クラスのみとなって3年目、午前は7~9年生、午後は10~12年生の6学年が学び、現在全校で546名の生徒が在籍しています。
国の教育制度の変更に対応するため、これまで5学年だった中学・高校が6学年となり、教室がひとつ足りなくなっていました。そこで、高校では文系の入学希望者が極端に減少していたことからこれを廃止し、理系クラスだけにすることで教室を確保したのです。しかも理系のほうが就職に有利なため圧倒的に人気があります。
9年生の女の子が私に近づき、こう言いました。「私は、高校では文系クラスで勉強したい。高校もこの学校に通いたいから文系クラスを作ってほしい」と。希望者が少ないため文系クラスを作るのは難しいと伝えると、彼女はちょっと悲しげな表情になり、私も悲しくなりました。


中学、高校の授業をのぞくと、教室は活気にあふれています。子供たちは元気に手を挙げて発言し、表情も明るく、学校生活を楽しんでいる様子でした。
コロナ・パンデミックのときは規制も多く、いろいろ大変だったと、当時のことが思い出されます。校門での検温や手洗い用タンクの設置、教室の消毒に人数制限、体育の授業の中止・・・本当に苦労の多い時期でした。感染拡大が落ち着くにつれて規制が緩和され、体育の授業も再開しました。今では、コロナ以前の学校生活が戻ってきたことを実感します。














学校を支えてくれる職員たち
学校職員の中には、当校の卒業生が2人働いています。売店で働く彼らは、生徒たちのお兄さんとして慕われています。年配女性の事務員は、服装が乱れていたり、態度が悪かったりする生徒を厳しく指導します。女子生徒の相談にのることもあり、お母さん(年齢的にはおばあちゃん)のような存在です。
用務員や夜警として働く職員たちも、生徒たちが気持ちよく勉強できるよう学校の環境整備に気を配ってくれています。ありがたく、頼もしい存在です。

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教育熱心な先生たち 当校の卒業生も多い
校長(中学・高校)、中学の教頭、高校の教頭はじめ、教師たちは皆優秀で教育熱心、生徒たちからの評判も良いです。
32名の教師のうち、5名が当校の卒業生。その一人、中学の数学教師ザカリアス先生は、彼の妻も中学の教師です。妻が地方の中学に単身赴任のため、彼が3人の娘の面倒を見ているそうです。
妻の単身赴任を許さない夫も多い中、彼は妻の仕事を尊重し、家事を担っていて「えらい!」と思いました。彼が妻の写真を見せてくれた時、「美人ね」とほめると、とても誇らしげでした。彼が幸せな家庭を築いていることがよくわかり、私もうれしくなりました。

【卒業生・ザカリアス先生から一言】
「モザンビークの太陽中学・高校は他の公立学校とは違います。教材がたくさんあります。教室は清潔で、机や椅子も整っています。生徒用の水もあり、必要なものはすべて揃っています。
このように設備が整っていない学校もたくさんあります。かつては生徒としてこの学校に学ぶことができたこと、そして今は教師としてこの学校で働いていること、とても幸せに思います」



母校の教壇に立つ卒業生 サントス先生(写真左:中学・英語)とメック先生(右:高校・英語)
給与日に給与が支払われる「すごいこと、感謝している」
中学の教頭は、同僚、生徒からも信頼のあついベテランの数学教師です。彼は、「自分はこの学校で長く教えてきたが、給与の支払いが滞ったことは一度もない。それはすごいことだ。自分たち教師は、本当に感謝している」と、述べてくれました。
その言葉を聞いて胸が熱くなりました。日本では決まった日に給与を支払うことは当たり前ですが、モザンビークでは給与の支払いが滞ることがよくあります。 今日まで滞ることなく教職員に給与を払うことができ、互いの信頼関係を築くことができたのは、皆様のご支援のおかげです。教職員が安心して働くことができる環境が、生徒たちの学びにも良い影響を与え、この学校を優秀な学校に育ててくれたのだと感じます。

30年の教育支援の実り
1995年の開校から今年で30年。ここで学んだ生徒の数は延べ14,000人を超えました。街で、空港で、官公庁で・・・さまざまな場所で、卒業生に声をかけられます。
医者になった卒業生は16名。技師や教師をはじめ、社会の各分野で活躍している卒業生こそが、WFWPの教育支援の実りです。この学校から多くの人材が育ち、貧困のない、平和な世界を作る担い手となるよう、より一層尽力してまいります。






モザンビークの子供たちのため、これからもWFWPは支援を継続してまいります。
今後とも皆様のご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。